【結果報告】第25回京都大学宇治キャンパス産学交流会『生存圏研究所』

 平成29年9月22日(金)、京都大学生存圏研究所木質材料実験棟(木質ホール)3階大会議室において産学交流会を開催したところ43名(1部講演会)の方に、参加いただき、熱心に聴講いただきました。

 京都大学防災研究所吉村剛教授より「これからの木材害虫対策―特に乾材害虫についてー」というテーマで、また、今井友也准教授より「セルロースの合成に学ぶ高分子構造の制御」というテーマでご講演いただきました。

 また、産学連携の実例として、城東テクノ株式会社様から「城東テクノ株式会社のしろあり保証からJoto基礎断熱工法について~」というテーマでシロアリの生態研究を踏まえたシロアリの害を予防し被害を最小化する同社の独自技術基礎断熱工法について発表していただきました。

 また、会員企業の事例紹介では、京都大学生存圏研究所と連携もされている株式会社丹宇様より「京竹の防カビと防腐」と題して、京都大学生存圏研究所の協力により開発された木質系耐候性保護塗料について発表いただきました。

 その後、生存圏研究所に隣接するシロアリ飼育室と材鑑調査室を見学し、シロアリの飼育現場や生態について吉村教授から、また、木材の保存資料等について今井准教授から御説明いただきました。場所をかえ、懇親交流会においても、大学、企業、行政関係者など、異分野の方々により、熱心な情報交換、意見交換が行われました。

 

第1部 講演会

≪1.研究シーズ発表≫

『これからの木材害虫対策-特に乾材害虫について-』
    京都大学生存圏研究所 吉村 剛教授 

 近年の住環境の改善により、住宅の機密性が高く、シロアリなどの害虫が冬でも死ななくなってきています。日本は木材の70%以上を輸入しており、海外から知らず知らずに侵入してきた害虫も少なくありません。この中で、元々日本に多く生息していたシロアリとは全く異なった侵入経路(地中から上ってきて材木に被害を及ぼす在来種と異なり飛来し天井に棲み着く)や乾燥した木材を好むアメリカから侵入してきた乾材害虫、特に乾材シロアリによる被害が全国的に増加しつつあります。従来型の防禦工事や対策では対処できないため、発生した被害の早期封じ込めや蔓延防止方法の確立が求められるところです。いずれにしても今後、異業種とのコラボによる新しい発想の対策が大いに求められるところです。

 

『セルロースの合成に学ぶ高分子構造の制御』
  京都大学生存圏研究所 今井 友也 准教授

 今、次世代の材料として注目を浴びているセルロースナノファイバーなど植物由来のバイオ材料としてのセルロースについて、その結晶構造や生成のメカニズムなど基礎的な研究を通じて今後のセルロース合成の実用化に向けた基礎研究について解りやすく御紹介いただきました。

更に、酵素タンパク質によるセルロース合成や大腸菌による組み換え技術による細胞壁形成の人工再構成の試みなど最先端の取り組みについてご紹介いただきました。生物由来の材料として注目されているセルロースナノファイバーなどの素材が、実用化に向けて、生成メカニズムの解明など基礎研究部門は重要であり、今後の研究が期待されます。

 

 

≪2.産学連携の事例紹介≫
 『城東テクノ株式会社のしろあり保証~Joto基礎断熱工法について~』     
       城東テクノ株式会社 マーケティング部 マーケティング課 大阪        係長 市川 真哉 氏

                                                                      

≪3.会員企業紹介≫

  『竹の防カビと防腐』      
   株式会社丹宇 代表取締役社長 伊藤 博 氏

          

       【産学連携の事例紹介】         【会員企業紹介 伊藤 氏】

 

≪4.施設見学≫

 京都大学生存圏研究所隣接するシロアリ飼育室と木材の収集と使用を展示した材鑑調査室を見学させていただきました。

 

              

                                 【シロアリ飼育室】            【在艦調査室】

☆ 参加者の声 ☆

  • 京大生存圏研究所の研究は興味深かった。

  • セルロースがよくわかった。
  • 新しい情報、知識を得ることができた。

  • 分かりやすく興味深い内容だった。素人でも理解できた。
  • 研究の先端を知ることができてよかった。

  • 内容的には満足であったが、講演時間が短すぎると思う。

  • 乾材害虫が日本に入ってきている状況を初めて知ったが、このことは今後どの

    ような影響を個別の住宅に与えて行くのか知りたい。

  • セルロースの合成についての研究内容も初めて知った。

  • シロアリ、全く新しい分野で興味があった。
  • 研究内容が普段では得られない情報のため、良かった。

  • 内容は難しかったが、有用な研究であることはわかった。特に竹の防カビは興味深かった。需要もたくさんあるのではないか。

  • 新しい情報、知りたかった情報がえられた。

 【事務局コメント】

 今回の開催で25回目となる節目の回となる京都大学宇治キャンパス産学交流会ですが、これまで取り上げることのなかったシロアリや次世代の素材として注目されるセルロースナノファイバーなど先端的な研究成果について解りやすく解説いただきました。

このテーマに呼応した企業からの連携事例発表、会員企業発表も好評であり、様々な分野から多くの方に参加いただき、交流会も盛況のうちに終了いたしました。参加者アンケート結果からも解りやすく、有意義であったとのコメントが多く見られました。(大変満足したと概ね満足したを合わせると100%となっています。)

 

2部交流懇親会においても大学、企業、支援機関、行政など様々な分野から約20余名の方に御参加いただき、熱心な情報交換や意見交換が行われ充実した交流会となりました。今年度も、当産学交流会を一層充実したものにするよう取り組んで参りますので、皆様からも御意見等をいただければ幸いです。

 なお、今年度は、今回の産学交流会以後、防災研究所との交流会(11月28日(水))、化学研究所との交流会(平成30年2月28日(水))を開催いたします。逐次ホームページ等でお知らせしますので、是非皆様の多数の御参加をお待ちしております。

 なお、次回交流会は、防災研究所の研究紹介で、12月頃の開催を予定し準備を進めております。

詳細が決まり次第ホームページ等でお知らせしますので、是非皆様の多数の御参加をお待ちしております。

 

問合せ先は、
京都府中小企業技術センター けいはんな分室
 TEL 0774-95-5050 FAX 0774-66-7546
E-mail keihanna@mtc.pref.kyoto.lg.jp