【結果報告】第21回京都大学宇治キャンパス産学交流会『生存圏研究所』

 

 平成28年9月16日(金)、京都大学宇治キャンパスの木質実験棟において産学交流会を開催したところ73名の方に御参加いただきました。(1部講演会)。

 講演終了後、高度マイクロ波エネルギー伝送実験装置(A-METLAB)を見学し、懇親交流会場(34名参加)においても、大学、企業、行政関係者など、異なる分野の方々による熱心な情報交換、意見交換が行われました。

 

第1部 講演会

≪1.研究シーズ発表≫

『持続的社会の構築を目指したバイオマスのバイオ燃料・機能性物質への変換」
   京都大学生存圏研究所    教 授  渡辺 隆司 氏

 人口爆発、資源枯渇、地球温暖化や環境破壊など人類が直面する生存の危機を、包括的な視点から様々な学問分野を融合させ、人類の持続可能な発展を考えることが生存圏研究所のミッションである。生存圏研究所長を努められている今回の渡辺先生の講演では、このことを先ず念頭におきながら、マクロな視点から講演いただきました。 特に、新たな生存圏科学のミッションである高品位生存圏の実現に向け、脱化石資源社会の構築や太陽エネルギーの変換・高度利用としてバイオマスやマイクロ波を使ったバイオエタノールや機能化学品の生産について講演いただきました。                          
バイオマス変換により製造される、バイオ燃料や機能性物質の有用性だけでなく、製造プロセスのみならず製造から廃棄に至るまで、廃材や農業廃棄物などを利用することで環境負荷が少なく、循環型社会の実現や持続的生存圏創成に寄与することが期待されます。

 

『ワイヤレス電力伝送 – 電池切れのない世界を作る –」
  京都大学生存圏研究所      教  授       篠原 真毅 氏

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 まず、マイクロ波を含む電波はエネルギーであり、電波も電気、磁気も同じ技術の仲間であるという前提事項の理解を踏まえ、電気をワイヤレスで送電する仕組みについて解りやすく解説いただきました。また、ワイヤレス給電の歴史と研究の現在までの状況や実用化に向けた課題などについて具体的なトピックなどを取り上げながら講演いただきました。

京大COIプログラム「活力ある生涯のための5Xイノベーション」における精華町での実証実験の取組みやマイクロ波送電やワイヤレス電力伝送の実用化を加速するためコンソーシアムを立ち上げられ、技術だけでなく標準化や安全性、ユーザーニーズに関する情報共有を行うなど精力的な取組みについて御紹介いただきました。

ワイヤレス給電技術が実用化できれば、離島での電力供給や火山探索、災害時など様々な場面での活用が大いに期待されます。

≪2.産学連携の事例紹介≫

『化学品受託製造の現状と今後の取組み』

  株式会社ファインケム 東京開発センター 開発技術部 部長  若林 澄夫 氏 

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『マイクロ波化学プロセスの産業展開』
  大阪大学大学院工学研究科 特任准教授 
 マイクロ波化学株式会社  取締役CSO  塚原 保徳 氏

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≪3.施設見学≫

 高度マイクロ波エネルギー伝送実験装置(A-METLAB)

 

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☆ 参加者の声 ☆

  • 興味深い、また新しい知識や情報を得ることが出来た。    
  • マイクロ波化学の実態が少し見えた。
  • ワイヤレス電力伝送の現状やエネルギーハーベストの考えがわかった。
  • どの講演も非常に興味深く、夢があり、勉強になった。
  • マイクロ波化学が面白かった。
  • 京大篠原先生のご講演は2度目であるが、企業向けに易しく、ダイレクトにお話しいただいた。他の講師の方も分かり易かった。
  • マイクロ波の実用レベルと用途についての確認が出来た。
  • マイクロ波関係の講演が勉強になった。
  • ワイヤレス送電と太陽宇宙発電の話が非常に面白いと思った。
  • バイオマス分野に関心があり、大変勉強になった。
  • ワイヤレス電力伝送、夢のある話は楽しかった。
  • 生存圏研究所の研究内容がよくわかった。共同で出来ることがあれば、今後フォーラム会員等に応募したい。
  • 京都大学の活動に初めて接することが出来たので良かった。
  • マクロ波が今後の技術革新のキーとなるので、現状の実用段階が聞けたのは良かった。今後はこの技術を利用して、新しい製品に活かしたい。
 【事務局コメント】

 第21回京都大学宇治キャンパス産学交流会は、生存圏研究所との交流会でした。

今回は、生存圏研究所の御厚意により、収容人数の多い木質ホールをお借りすることができたこともあり、毎回50名程度の方に御参加いただいておりましたが、今回は、これまでの参加者に加え、東京、福岡等他府県からも参加いただき、70名以上の方に御参加いただきました。

生存圏研究所は、宇宙科学からエネルギー、木質科学、電波科学、分子生物学など広範囲な分野を対象としていますが、今回のシーズ発表の冒頭で、渡辺先生から生存圏研究所の使命は、「人類が直面する生存の危機を、包括的な視点から様々な学問分野を融合させ、人類の持続可能な発展を考える」ことにあると示唆されたことにより、その後の発表がストーリー性が感じられ理解の一助となりました。持続可能な発展に不可欠な環境負荷の少ないバイオマスから燃料や機能性物質の変換や篠原先生のワイヤレス電力伝送は夢があるお話しであるとともに、実用化に向けた具体的な取組みも御紹介いただきとても示唆に富んだ内容でした。

また、関連企業紹介での、研究開発を下支えする株式会社ファインケム様の化学品の受託製造販売の取組についての説明、更に、大学発ベンチャーとして化学プラント工場まで建設され、マイクロ波化学でプロセスイノベーションを目指すマイクロ波化学株式会社の取組みはとても示唆に富んだものでした。

施設見学は、篠原先生の講演にちなみ、様々な電波科学に関する研究、マイクロ波無線電力伝送実験ができる電波暗室A-METLABを見学しました。2部交流会も34名の方に参加いただき、熱心な情報交換や意見交換が行われ、盛会の内に終了しました。 

今後も当産学交流会を一層充実したものにするよう取り組んで参りますので、皆様からも御意見をいただければ幸いです。

 なお、次回交流会は、防災研究所の研究紹介で、12月頃の開催を予定し準備を進めております。

詳細が決まり次第ホームページ等でお知らせしますので、是非皆様の多数の御参加をお待ちしております。

 

問合せ先は、
京都府中小企業技術センター けいはんな分室
 TEL 0774-95-5050 FAX 0774-66-7546
E-mail keihanna@mtc.pref.kyoto.lg.jp