【共同研究】「炭酸カルシウムを用いた接着層の非破壊的水没履歴の検出手法」

Keyword:テラヘルツイメージング、接着、水没、ヴァテライト、カルサイト、結晶転移

 

本研究のポイント

テラヘルツ光とヴァテライトの結晶転移を活用

 炭酸カルシウム(CaCO₃)の結晶形の一つであるヴァテライトは水分との接触によりカルサイトに結晶転移し、テラヘルツ帯(3.2THz近傍)における吸収が増加することが知られています。
 そこで、我々の研究グループはこの現象を接着層の接触履歴を可視化するためのマーカーとして利用することを着想し、本研究により実証しました。

 

 

水没時間に伴うヴァテライトの透過率変化

ヴァテライト(水没前)

ヴァテライト(水没後)

 

 

本研究の背景

接着層を分析するにあたっての課題

 多くの用途に用いられる接着剤は高分子が主成分となることから水分や紫外線といった長期使用に伴う環境暴露により経年劣化することが課題となっており、特に水分との接触による加水分解は接着性能の顕著な低下をもたらす要因として認識されています。
 現状では、被着材の剥離や接着端面を露出させて赤外・ラマン分光等で水分による接着層への影響を直接的に評価する手法のほか、超音波やX線を用いて減衰量の変化から接着層の変性などを間接的に観察する手法が行われています。
 しかしながら、対象物の破壊を必要とする、もしくは取得したデータの解釈に難度の高さを抱えており、非破壊かつ明瞭に水分と接着層の接触履歴を明らかにするような評価手法が求められています。

 

 

本研究の成果

テラヘルツイメージングにより水の侵入履歴、経路を非破壊で可視化

 ヴァテライトを接着剤に混合して作成した試験片を水没させ、テラヘルツイメージングを取得しました。
 その結果、接着層が水と接触した履歴を非破壊的に検出するマーカーとして機能させることができることが分かったほか、水没履歴のみならず接着層への水分の侵入経路についても可視的に取り扱うことができることが明らかとなりました。

ヴァテライトを予混合して作成した試験片

接着層のテラヘルツイメージング

 

 

 

 

お問合わせ先
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