平成27年12月16日(水)、京都市伏見区の京都大学防災研究所(宇治川オープンラボラトリー)において産学交流会を開催し、44名の参加者がありました(1部講演会)。
はじめに、京都大学防災研究所の平石哲也教授より「沿岸構造物のレジリエンシ(粘り強さ)を高めるための産学共同研究」について、ご講演をいただきました。
また、産学連携の実例として、㈱NAテック代表取締役社長 青山栄次様が当防災研究所と共同開発された「『水に浮く布団 セーヴィングフローター』の開発について」を実演を交えながら、解説をしていただきました。
その後、川池健司准教授に宇治川オープンラボラトリーの実験棟について解説、案内していただきました。希望者には災害実験設備を体験していただき、改めて自然災害の威力を感じる良い機会となりました。
交流スペースで行った第2部の懇親会では、参加者同士や京大関係者の方に商品や技術に関して質問したり、和やかな雰囲気の中で懇談をしていただくことができました。
第1部 講演会
≪1.研究シーズ発表≫
- 『沿岸構造物のレジリエンシイ(粘り強さ)を高めるための産学共同研究』
京都大学防災研究所 教授 平石 哲也氏 - 先の東日本大震災では、津波により多くの防波堤や防潮堤などの沿岸構造物が破壊され、大きな被害が生じました。これを契機に、従来考えられていた計画津波高さをレベル1、数千年に一度起こるかもしれない最大クラスの津波をレベル2として定義されることになりました。沿岸構造物の多くは、レベル1津波等を対象として整備されていますが、レベル2津波に対しても”粘り強く”抵抗する必要があります。本公演では、粘り強さを発揮する工法を紹介していただきました。
≪2.産学連携の事例紹介≫
- 『水に浮く布団 セーヴィングフローター』の開発について』
株式会社NAテック 代表取締役社長 青山 栄次氏 - 東日本大震災では、多くの尊い命が奪われ、その内、約90%以上は津波による溺死でした。このことから、日常使用するものでいざという時、即時に持ち出せるものはないかと考え商品開発をされました。その研究は京大防災研究所宇治川オープンラボラトリーにて実施され、より確かな研究結果が得られました。布団だけでなく、枕やレジャーバッグを実際に示しながら解説していただきました。
≪3.施設見学≫
- 『宇治川オープンラボラトリー実験棟』
京都大学防災研究所 准教授 川池 健司氏 - 宇治川オープンラボラトリーは、水・土砂に関連する実験装置を備えた京都大学防災研究所の施設です。ここでは、防災に関する基礎研究から世界最先端の話題まで、学内外の研究者が様々な研究を行っています。
今回の施設見学では、棟内の実験装置を用いて、流水階段での歩行などを体験しました。
第2部 交流懇親会
- 会 場 : 京都大学防災研究所 宇治川オープンラボラトリー 交流スペース
☆ 受講者の声 ☆
- 普段見られない施設を見学・体験でき、知らないことを教えていただけた。
- 実験棟は思っていた以上にスケールが大きく、設備も揃っていた。
- 先生の説明が大変わかりやすく良かった。
- 海岸工学について、最近のテーマの有意義な話を聞けた。
- 特にケーソンや防波堤の粘り強さを高めるために、港外側と港内側で違う策をしていることに興味がわいた。自分がこのようなことを研究することにおいて、ただ良いものをつくるだけでなく、規模が大きいので、経済面についても考えなくてはならないと感じた。
- こうした広大な敷地で、大規模な実験装置を見たことがなかったので、大変興味深かった。
- NAテック様の話が良かった。
- 異業種の方と話ができて良かった。
- 施設見学で津波が不調なのは残念だった。
- 防災模型がとても良かった。
- 防災グッズ例を見ることができた。
- 初めてなので、勉強不足もあり、様子が分からなかった。
- 講演内容も参考になったが、一部プレゼン準備、進行の面での改善があればと思った。
- 津波に関する防災・減災の研究の一端を知ることができたと思う。
- 防波堤の破壊のメカニズムなどは初めて理解できた。
- 防災用の布団などは今後重要になると理解できた。
【事務局コメント】
今回はいつもの京都大学宇治キャンパスを離れ、京都市伏見区にある防災研究所宇治川オープンラボラトリーを会場に交流会を開催しました。 宇治川オープンラボラトリーは、多くの観測・実験装置群を有する世界有数の規模を誇る総合実験施設です。文字どおり研究所外の研究機関や研究者、一般企業、学校などの共同利用施設として、研究やバーチャル災害体験学習など幅広く活用されています。 まだまだ、東日本大震災の津波の記憶が鮮明な中、沿岸構造物がご専門の平石先生から、これまで以上に津波の強い防波堤にするための強化工法の開発について、このオープンラボラトリーでの研究・開発の模様をお聞きしました。 この大震災では過去に例のない規模の津波が発生しました。どれだけの規模の構造物で災害を防げるのか、自然が相手だけに、完璧は無いようです。そこで、いかにして被害を少なくし、助かる人たちを増やすか、その観点で「水に浮く布団」を開発された㈱NAテック青山社長の開発秘話も興味深いものがありました。 今回はなんと言っても、実際に実験棟を見て、体験していただくことに時間を割きました。参加された皆様には大変好評でした。実験施設も部分的には、テレビや新聞でよく取り上げられるようですが、全体を見学する良い機会でした。災害にまつわる様々な立場の方が参加いただいたのもそうしたことからだと思います。 > ご協力いただいた防災研究所の先生方、オープンラボラトリーの職員の皆様には心からお礼申し上げます。 |
問合せ先は、
京都府中小企業技術センター けいはんな分室
TEL 0774-95-5050 FAX 0774-66-7546
E-mail keihanna@mtc.pref.kyoto.lg.jp