【結果報告】けいはんな技術交流会Ⅱ ~大規模災害に対する強靭でしなやかな社会を目指して~

 

京都府中小企業技術センターでは、トレンド情報や中小企業支援について、情報交換、意見交換を行うため、けいはんな技術交流会を開催しております。

 平成29年3月10日(金)には、けいはんなオープンイノベーションセンターにおきまして、~大規模災害に対する強靱でしなやかな社会を目指して~をテーマに「けいはんな技術交流会Ⅱ」を開催いたしました。年度末近くの多忙な時期にもかかわらず39名の方に御参加いただきました。

 過去5~6年の間に、東日本大震災をはじめ、熊本地震、鳥取地震など複数の巨大地震が発生している一方で、高度経済成長時に建設したインフラが更新時期を迎えています。災害に強いインフラの更新は、大きな社会的課題となっています。

これらの国家的な大きな課題に対し、最新の耐震、制震技術の活用や人口減少社会を迎え公共施設建設費用捻出に苦労している自治体などの公共施設整備に当たり、PPPなどの新たな施設マネジメントのノウハウを活用し、インフラや公共施設等をどう更新、維持管理していくのかについて今回の技術交流会で考えてみました。

 

 また、講演会終了後、参加者による名刺交換等の異なる分野の方々による情報交換やネットワーキングが行われました。

 

第1部講演会

1 講演

(1)『国土強靱化の概要と民間の取組促進について』

    内閣官房国土強靱化推進室   参事官      吉田 恭 氏

国土強靱化とは、強さとしなやかさを備えた経済社会システムを平時から構築しておくという考えです。(中央防災会議が平成20年初頭に想定した、首都圏直下型地震も当時の首都圏(全国)の耐震化率を89%(79%)から100%にすると被害の9割が削減できると推定されています。)

また、この平時の強靱な社会経済システムの構築は、国家的な課題であるとともに、地域や企業の課題でもあり、また、大きなビジネスチャンスでもあります。現在国土強靱化計画を国、都道府県、市町村レベルで作成する一方で、民間の投資を促進するために民間の強靱化市場規模を内閣府が推計したところ2020年の国土強靱化に直接資すると考えられる財・サービスの個別市場(コア市場)だけで、実質11.8兆円から13.5兆円の規模となると試算されています。

他方、企業・団体等を含めた社会全体の強靱化を図るため企業の事業継続も不可欠であり、内閣官房では、これを推進するために国土強靱化貢献団体認証制度を設け推進に取り組んでいることなどを御紹介いただきました。

 

(2)『新しい免震システムの開発を目指して』

    神戸大学 大学院工学研究科      特命助教     岸田 明子 氏

病院や災害時に防災拠点となる公共建築物など、高い耐震性能が求められ、特別な免震措置が講じられている。これらの「免震建物」は、全国に約8,600棟あると言われているが、近年発生した熊本地震などの巨大地震にも適切に対応できるようにするためには、更なる免震技術の開発と新技術の導入が必要となります。これまでの技術では、免震装置が様々な規模の地震に対応できていないなど、地震の規模などにより性能が低下するなどの課題があり、また、免震技術を施していない擁壁に建物が衝突する可能性があるなど様々な課題もあります。これらの課題解決のため、従前の地震エネルギーを吸収するデバイスであるダンパーを改良し、低コストで多様な地震の規模にも対応が可能な「オン・オフダンパー」を開発するなど課題解決に向けた装置やしくみづくりなどの研究・開発の取り組みを紹介されました。

                         【吉田参事官】                   【岸田特命助教】

                                           

 

(3)『制震システムSHQAS(シーカス)のご紹介』

   積水ハウス株式会社 総合住宅研究所 構造・防災研究開発G グループリーダー

    部長 谷川 清次 氏 

  阪神淡路大震災では、25万戸の住宅が全壊や半壊するなど大きな建物の被害が生じたが、阪神地区の同社の約3万棟の住宅には、全壊・半壊は生じなかった。とはいえ、大地震の衝撃に耐えた後に、更に次に来る大地震にも耐えられる強い住まいを提供するため、制震システム開発に着手し、制震ダンパーを使用したフレームのSHEQAS(シーカス)を開発されました。SHEQAS(シーカス)は、地震による建物の変形を1/2に低減し、建物被害を軽減するとともに、コア技術の高減衰ゴムを使用した粘弾性ダンパーは、揺れが収まると元に戻るため熊本地震のような余震が連続しておきる場合にも有効です。また、粘弾性ダンパーの長期耐久性についても研究を続けています。

 

(4)『公民連携による公共施設整備の展望と課題』

    京都府府有資産活用課 課長 菱木 智一 氏

 国土強靱化を推進するに当たり、自治体が担う役割も少なくありません。高度経済成長時に建設された公共施設で、災害時に防災拠点にもなる多くの施設が今後、更新時期を迎えます。他方、少子高齢化や人口減少社会を迎え、公共施設の更新や維持管理費用を自治体だけで捻出することが困難となってきています。このような中で、公共施設の建設や維持管理を民間の知恵や資金をいただきながら公民連携で進めるマネジメントシステムが注目されています。このような手法としてPFIやPPPといった手法が知られていますが、このような手法を用いた公民連携による施設整備により、安全な施設更新や持続可能な施設の維持管理だけでなく、まちづくりにも寄与した岩手県紫波町の公共施設整備事例等を紹介いただきました。

     【積水ハウス 谷川部長】          【京都府府有資産活用課 菱木課長】

           

 

2 意見交換・交流

      【意見交換】                    【交流懇談】                         

     

 

3 アンケート結果

・交流会の内容に大変満足した、概ね満足したを合わせると94.45%となり、多くの方に満足していただきました。

 

【主な参加者の声 アンケート結果から】

・専門外の内容の講演だったが、理解容易な説明をして頂けた。
・業務に直接関する話題が多く、テーマが産学官によるところが良かった。
・災害に対する民間市場の取り組み活用および公民連携についてのノウハウが得られた。
・(免震等の分野)専門家ではないが、国土強靱化の話(脆弱性評価やBCP)は身近な事業についても考え方活用できると思った。
・今後の災害対応への役立つ技術を知ることができ、よかった。
・PFIは私自身も研究したいと思った。
・3.11の前日というタイミングはインパクトがあって、参加意欲をかきたてられた。
・国土強靱化貢献団体認証制度があるのを知った。今後、京都市と協定を結び、前向きに検討していきたい。
・専門外の分野の話なので、聞くことにある程度新鮮さを感じた。
・国土強靱化室の参事官の方の話が聞きたかったので、参加して良かった。
・それぞれの立場の方から最新の情報を聞くことができ参考になった。
・専門分野とは違う内容の話が多く、理解できなかった部分もあったので、今後勉強していきたいと思う。
・専門的なことは理解できなかったが、積水ハウスさんの説明と京都府の公民連携による公共施設整備の展望と課題については、わかりやすく興味を持った。
・いろんな事例を聞けたので満足したが、やはりビジネスにつながらないと技術は活かされないと思うのと、災害は待ってくれないので、大学の先生にはもう少し現実的に結果を見据えた研究のすすめ方をしてもらいたいと思った。(そう感じなかったので)
・近い将来の地震を含む大災害に対する予防意識を大いに高めてくれたテーマであった。
・木造家屋などの耐震に興味あり。民間研究所での実績に感心した。
・建築の免震に興味があり、聞かせてもらったが、ビルだけでなく戸建て住宅に適用してほしい。戸建ては制震が多い。
・テーマとして合致するものとそうでないものがあった。 

 

【事務局コメント】

 今回の技術交流会は、東日本大震災前が発生した3.11にちなみ3.10に開催しました。東日本大震災から早6年が経過しましたが、その後も各地で地震が続いています。大規模地震に関連し、国土強靱化をメインテーマとしましたが、年度末にもかかわらず多くの方にご参加いただきました。

国土強靱化という国家的な課題の全体像や国の取組みをはじめ、免震、制震の技術シーズや公民が連携したインフラ整備や維持管理マネジメントの取組みなど多角的な視点からこの国家的な課題解決に向け、フロアとの意見交換も行いながら熱心に聴講いただきました。

今後も、けいはんな技術交流会では、トレンド情報や今後ビジネスに結びつく可能性のある社会が抱える大きな課題などについて企業の皆様と情報共有し、中小企業の皆様と支援機関がオープンな場で意見交換をする仕組みやしかけづくりに取り組んで参りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。